室﨑先生 × 松尾理事長対談

地区防災計画推進特別企画。地区防災計画学会会長の室﨑益輝先生と当会松尾理事長との対談です。(3/4)

※ この対談は2018年4月9日に行われました。(要約:編集部)

室﨑:相模原がそういうシステムなんです。各町内会のリーダーにみな防災士がいて、学校の避難所運営を決めるのにもその防災士たちが集まって運営委員会を作ったりする。まさにそういう横につなぐ役割りを防災士がしている。逆に云うと小さな単位にきちっとその防災士を2人3人作っていくってことがとっても重要で、一つの町の中に2人3人の防災士がいるということは地区防災計画をちゃんと作ることにつながっていくわけです。

松尾:そうですよね。日本防災士会の地区防災計画の推進は、具体的には今全国の支部が100くらいの自主防を推進モデル地区に指定して、支部がそれを継続して支援をしていく。そして、しっかりした計画の目途がついたら、次の地区を考えるという計画でやっています。

室﨑:最初から100パーセントじゃなくて、できるところは少しずつ積み上げていく。防災士会は全国のネットワークを持っているので、全国に広げようと思えばどんどん広がっていく。そういう意味では、最初は小さな取り組みでも一気に全国に広がる可能性を持っているのでとてもいいことだと思います。ただ、その時になにか形を押し付けるんじゃなくて、自由にどんどんいろんな事例を作っていって、いい事例をみんなに紹介していく、そうするといいですね。

地区防災計画制度における防災士の役割

室崎:これまで話してきたように、地区防災計画はいろんな人たちが集まって作るので、そういういろんな人たちの意見をまとめる作業、つまりコーディネートする作業が重要であることが一つ。もう一つは、防災にはやはり専門性が必要です。命を守ると云っても、人工呼吸ができないと守れないし、消火のバケツリレーの方法がわからないと消火もできない。技術的な専門性とか、特に地域の危険性を理解するとか、高度な専門的知識がないといけないわけです。だから、計画の策定にはコーディネーターとスペシャリストがいるんです。
そのコーディネーターとスペシャリストの役割をする人は一体誰か。最初、国がやった時はそれを大学の先生が請負って入ったわけです。それで、いい先生が入ったときはさすがにいいのですが、じゃあ、そういう先生が日本中に千人とか一万人いるかって云ったら、そうはいない。本来の制度の趣旨に立ち返ると、外から偉い先生が入ることよりも、地域の中にそのコーディネーターと専門性を兼ね備えたスペシャリストがいるのが一番いい。



よくよく見るとそこに防災士だとか、消防団とか、小・中・高の学校の先生がいる。その防災士とか、消防団とか、学校の先生とかにそのコーディネーターとスペシャリストの役割を果たしてもらうのが一番いいし、果たしてもらわなくてはいけない。地区防災計画の生命線はそこにあると考えています。
そこは、まさに防災士会の皆さんと思いが一致しているとこです。防災士会は人づくりの方からその地域を考える。我々は計画づくりという面から考える。計画づくりと人づくりの接点は、まさにその防災士が中心的な役割を果たすっていうことなのです。
それはもう私からすると本当に待ちに待った、ある意味では防災士がいるからこういう制度が成り立つと考えています。
国のアドバイザー派遣という制度も2年で打ち切られて、それぞれ今、地域で独自にやり始めています。独自にやり始めたときに、地域でそれを担っていく人たちというのは防災士です。香川県なんか防災士が中心です。それから、この前、富山県に行ったんですが、地域コミュニティの計画策定の場に防災士会の代表、支部長さんがちゃんとメンバーに入っているんです。富山県は避難所運営の責任を防災士会に頼みたいわけです。避難所の運営は、制度的には行政が鍵を開けて設置するのですが、熊本地震を見ても、行政職員は全くできなかった。じゃあ、遠く佐賀県から来た人が運営に当たるかといっても、地域のことが何もわからないのでうまくいかない。だから地域のことが分かっていて、専門性を有し、訓練された人たちがいないといけないということになると、やはり避難所の運営などは防災士の人が元消防団員らとリンクしてやると、とってもうまくいくんです。

松尾:確かに、大学の学者先生といっても人数が限られています。北海道から沖縄まで、限られた先生が指導に行くのは不可能ですよね。そうすると我々はそれぞれの都道府県に支部があって、それぞれ活動しているわけですから、その先生に代わるような仕事をちゃんとやれるようになれば一番いい。我々が活動理念に掲げていることは、地域の自主防等の活動に参画し、そこで活動に対する助言、指導をすることですので、更に地区防災計画を推進するためのスキルアップを図ることが喫緊の課題と考えています。仮定の話ですが、防災士会の会員は現在8,600余人でが、防災士の数は全国に14万7千人ぐらい。今、全国に自主防組織が15万ちょっとあるそうですが、計算上は、防災士がそれぞれの地域の自主防にそういう形で入って行ける数です。そういうふうにできれば、これは凄いことだなと思っています。
ただ、現場からは活動理念はわかるけども、なかなか地域の自主防に入り込めないという意見もあります。また一方でそれは行政等とうまくやれば行政が橋渡しをしてくれたりするという話もあります。

室﨑:そこは、これからの課題だと思います。私が見ていると、うまく防災士が入ってやっているところは、行政と防災士の関係がすごくいいんですよ。ところが、ちょっとだけ横を向いている行政もたまにある。その理由は彼らは勝手に防災士の資格を取って、俺たちは行政とは関係ないんだという顔をしていると云うんです。
石川県なんかは県が一生懸命やっていて、知事もすべての町内会に防災士を2人置くんだということでやられている。そういうところは、防災士もごく自然にコミュニティの中に入れるのですが、試験だけ受けて私は防災士ですと云って、途中から入ってきて、防災はこうだ、ああだと云うと嫌がる人がいる。だからコミュニティと行政と防災士の関係をどう作っていくかがとても重要です。結果として防災士が入ってもらうとコミュニティにプラスだし、行政もプラスなのですが、そこの関係性をどう作るかってことは、かなり努力しないといけないと思います。

松尾:それから、防災士会の役割については、ガイドラインに、地区住民が地区防災計画を策定する際の防災士会の役割を明示していただいておりますが、大変光栄に感じております。

室﨑:これは大変重要なことですよ。きちんと国の文書に防災士会を公認したのですから。

松尾:国が防災士会の存在を認めてくれて、我々の役割をちゃんと示してくれた。これはすごいことだと会員にも話しているんですよ。

室﨑:それは今までの防災士会の実績がそうさせていると思いますね。この制度を含め、今の日本の防災は、やはり防災士会抜きでは語れない状況にあるということです。

松尾:大変光栄なことです。地区防災計画制度を防災士会活動の存立基盤にして、地区防災計画と云えば防災士会、防災士会と云えば地区防災計画、即ち、防災士会が地区防災計画推進の請負人たる立ち位置を一日も早く確立できるようにしなければならないと痛感しています。防災士会会員だけでなく、全国の14万余人の防災士を含めてそう思っています。

室﨑:そういう志を持ってみな防災士になったが、今まではその志を生かす場所をどこも用意してくれなかったので、皆、悶々としていたわけですよ。肩書だけはあるけど何もしていない。この度、防災士として活躍できる場が、地区防災計画という中にちゃんとできたということなので、防災士の皆さんは遠慮なくどんどんその場に入ってきていただきたいですね。

行政との関係

松尾:地区防災計画制度につきましても、行政との関係が非常に重要ですよね。ただ、我々は全国展開をしていますから、全国の話が聞けますが全国的にみると行政の取り組みにはすごく温度差がある。行政との連携が必要だということで地区防災計画について相談に行くと、全くよそ事みたいな話をして、あまり関心を示さないという行政もあるというのです。私はそういうところについては、とにかく我々の実績を作ろう、そして、その実績をもとに行政の尻を逆にこちらがたたいていったらどうかと云っているのですが、なかなか消極的な行政に対する付き合い方が難しい。