室﨑先生 × 松尾理事長対談

地区防災計画推進特別企画。地区防災計画学会会長の室﨑益輝先生と当会松尾理事長との対談です。(1/4)

※ この対談は2018年4月9日に行われました。(要約:編集部)

会員は地区を目指そう!

松尾:本日は、大変ご多忙中のところ、ありがとうございます。
日本防災士会では、地区防災計画の推進を最重要課題として取り組んで、今年で4年目を迎えました。日本防災士会は、平成16年10月に設立しましたが、以来、「会員は居住する地域の自主防災組織等の活動に参画して、防災計画の策定、計画に基づく訓練の実施等、防災リーダーとして指導的役割を果たすことによって、自助、共助のしっかりした防災協働社会の実現に貢献する」ことを活動理念に掲げて活動をしてまいりました。
そうした折、平成25年に災害対策基本法が改正され、地区防災計画制度が創設されましたが、その制度の目指す目標は、私ども日本防災士会が掲げている活動理念と同趣旨であり、云ってみれば、私どもの活動理念が法制化されたというふうに理解しているところです。
この地区防災計画制度の創設によって、私どもの活動目標である活動理念を具現化することは、即ち地区防災計画制度を推進することであり、活動目標が具体的に明確になったと考えています。そのため、日本防災士会では、すぐに地区防災計画推進本部を立ち上げ、理事長が本部長となって、活動の最重要課題として取り組んできたところです。
今年は、更に活動を加速させるため、会員は地区を目指そう!をスローガンにした地区防災計画推進キャンペーンを企画し、会員に対する地区防災計画制度の周知徹底と活動の更なる推進を図りたいと考えています。
室﨑先生におかれましては、地区防災計画制度の創設に中心的な役割を果たされたとお聞きしておりますし、また、現在、地区防災計画学会の会長をされていらっしゃるということでございますので、改めて、この地区防災計画制度の趣旨、創設に至った経緯、背景と制度推進上の基本的な在り方などについてお話しいただければと考えております。

地区防災計画制度の趣旨、経緯、背景

室﨑:はい、どうもありがとうございます。まさにその制度の趣旨は、阪神・淡路大震災に遡ります。そのときに云われたことは、大規模な災害のときには、公助だけではだめだ、行政の力だけではもうどうにもならない、そこに自助と共助が必要だということですね。その中でも、共助がとても大切だと思う。例えば火事が起きてもすぐにみんなで消さないといけないですし、避難所の運営もコミュニティで支えないといけない。そこで、一つは地域の取り組みというものをもっときちっと日本の中に位置付けないといけない。自主防災組織の取り組みはありますが、制度的に保証されたものではないですし、そこに義務だとか権利だとか、そういうものが必ずしも明確になっていない。そこで、地域の取り組みを制度的にも位置付けないといけないし、その地域の取り組みを応援できる仕組みをきちっと作らないといけないというのが、阪神・淡路大震災のときに痛感したことです。



もう一つ、阪神のときに痛感したことは、災害が来てからでは遅いということ。家が壊れて下敷きになってしまう、それよりも前に家を壊れないようにするとか、家具が倒れないようにするとか、更にそれ以前に国民一人ひとりの防災意識そのものを変えないといけない。災害が起きてからの防災ではなく、事前の取り組みをしっかりしないといけない。この地域の取り組みと事前の取り組みを繋いだらどういうことができるのかというと、やはりそこに住んでいる人たち自身が、その地域の危険を理解し、課題を見出して、そこに計画を作るプロセスがないといけない。それがまさに地区防災計画だということです。
ところが、なかなかすぐにはそういう機運にはならなかった。やはり、国や自治体が行政としての防災責任を果たすということを軸に日本の防災計画・システムができている。そういう意味の国の責任、自治体の責任が基本にある。そしてこの仕組みは、基本的には災害発生直後のトップダウンなんです。警察とか消防は、そのための指揮命令の仕組みがちゃんと出来上がっているけれども、そのトップダウンの仕組みともう一つボトムアップの仕組みがいるんじゃないか。ボトムアップの仕組みをきちっと作ることによって、もっと国民の自発性を引き出し、国民一人ひとりが積極的に防災にかかわっていくことができる。これまでは行政がすべてしてくれるので、国民は何でもしてもらおうという非常に受け身的になってしまった。そこで、過保護の防災ではなくて、やはり積極的にその力を引き出して、国民自身が災害に強くなり、積極的にやるような仕組み、ボトムアップのシステムが必要ではないか。トップダウンとボトムアップが、車の両輪のように動くような仕組みに変えないといけないと思ったんですね。災害直後はやはりトップダウンだけど、事前対策はボトムアップでしっかりしておかなければいけない。予防だとか事前のいろいろな取り組み、訓練だとか教育は、まさに地域主体の仕組みに切り替えないといけないと思って、悶々としていた時に東日本大震災が起きたんです。
そして、東日本大震災では事前対策がちゃんとコミュニティでやっていたのかどうかが問われたわけですね。そこで私も強く思ったし、国もこれはやはりシステムを変えないといけないということで登場したのが地区防災計画制度です。
その地区防災計画制度を作る時、いろいろと反論がありました。それは、防災は国の仕事なのに、なぜコミュニティが自ら焼き場の栗を拾いに行くかのようなことをするのかという意見です。私はこの地区防災計画をつくるときに、地域の自発性は尊重するけれど、地域の規範だとかルールだとかを守る義務があると云ったんです。地域は地域の責任をきちっと自覚しないといけないということで。ある意味、地域の共助の世界に責任論を持ち込んだという形になって、それに対する意見もありました。
それから、二つ目はいっぱい自主防災などの取り組みがある。新たに制度だとか仕組みだとか、災害対策基本法まで変える必要はなく、もっと自主防災活動を強化すればそれで十分ではないかという意見もありました。
私は、阪神・淡路大震災から東日本大震災を経験すると、単に今までの延長線上ではなくて、今の我々の社会の仕組みを180度変えないといけないと考えました。じゃあ、変えるということはどういうことかというと、やはり新しい制度として位置付ける。今まではなかった災害対策基本法なりに、地区防災計画もあるよということを書き込むということがとっても重要でね。防災体制の抜本的転換をするという意味で云うと、自主防災組織の延長という議論ではいけないんです。そういう意味でいろんな意見があったんですが、内閣府の方々が相当力入れてこれをやるんだということと、それから防災士会もやりますよとか、消防団もやりますよとか、応援の旗がいっぱい立ったんです。
それでやり始めたら、広がり方がすごいんですよ。最初はモデル地区で国から予算もらって、アドバイザーを付けて、一生懸命背中を押すようなことをやって、やっとモデル地区を始めた。だから最初の1~2年は全国で40地区くらい取り組むのが精いっぱいでしたが、今は3,000くらいの地区が一気に始めました。この1~2年はすごいですね。行政単位でやっているところもある。やはりその地域の人たちの気持ちにも合ったんですよ。コミュニティが中心になって、自ら率先して、自発的に、自分たちの思いを計画にするんだ。与えられた計画ではなくて自分たちで作る計画という形に切り替わったところで、やる気がすごく出てきているように思います。

地区防災計画策定の基本

松尾:日本防災士会では、昨年度、全国6ブロックで、都道府県の支部長と各支部の地区防災計画推進担当責任者を集めて、支部における地区防災計画の取り組み状況について協議しました。その中でいろいろな課題や意見がありました。その辺についてお伺いしたいと思います。
まず、会議で話題になったのが、計画提案制度についてです。地区防災計画制度は、一つは地域の皆さんが自ら作る防災計画、もう一つはその結果を行政に提案する計画提案、その両方が相まってこの制度が完成すると理解をしておりますがそれでよいでしょうか。



室﨑:その通りです。とても重要なポイントです。

松尾:それで、現場からは、その計画提案をする以上、やはり最初から立派な計画書を作らないと受け付けてくれないのではないかという意見がありました。私は、計画提案はひとまず脇に置いて、まずは皆さんで防災計画を検討してほしい。計画提案をするかどうかは計画ができ、それが機能するかどうかを検証したした後で検討すればいいと云っているのですが。