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2024/07/03

千葉県支部 県立千葉高校の教職員救命救急講習支援 6/5

日本防災士会千葉県支部は5月24日、千葉市中央区葛城の県立千葉高校で、教職員約50人を対象に救命救急の実践講習を行いました。同校が毎年行っている応急手当て訓練の一環で、千葉県支部に講師派遣を要請されたのは初めてです。

ノウハウを知れば救える命、助かる命がある――修得の大切さを先生たちに改めて伝える濱本武将・日本防災士会千葉県支部長

当日は濱本武將支部長、川崎隆克(たかよし)防災士をはじめ支部会員防災士約5人が参加。放課後の午後2時、同校体育館に川崎防災士が持参した心肺蘇生(胸骨圧迫・人工呼吸・AED)訓練用上半身人形16体を配置し、訓練が始まりました。

川崎防災士は今80代です。現役時代、東京消防庁の特別救助隊(現ハイパーレスキュー隊=正式名称は消防救助機動部隊)に所属し、連合赤軍による三菱重工本社ビル爆破事件(1974年)、ホテルニュージャパン火災(1982年)をはじめ、戦後史に残る重大事件事故で救助活動の最前線に立ち続けました。

多数の要救助者が出る災害現場などで使われる「トリアージタッグ」(負傷程度選別票)の意味や使い方などを説明する川崎防災士

人の生死の分かれ目に数え切れないほど接した体験から、退職後は認定NPO法人日本防災士会(東京)に参画、参与として元同僚の防災士たちと日本防災士会に「技術支援チーム」を立ち上げ、代表を務めている人命救助のエキスパートです。この日使用した訓練用人形(1体約3万円)も、長年の第一線活動で得た様々なノウハウを一般市民に伝えたいと自費で購入、ふだんは千葉県内の自宅に保管し、講習会の都度、会場へ運んでいます。

この日の講習では最初に、教員を要救助者(傷病者)に見立て、川崎防災士が▽足の骨折に対する応急手当て(洋傘を添え木に利用した負傷部位の固定)、▽担架搬送法(毛布と棒2本=この日は竹竿=で作る即席担架と搬送者2人の歩調の取り方)、▽空のリュックサックで要救助者(傷病者)をひとりで背負い、搬送する方法などを実際に行いました。専門用具類が無くても、身近にあるもので応用する“柔軟な発想・工夫の大切さ”をアピールします。

県立千葉高校体育館で行われた先生たちの救命講習会

続いて、訓練用人形1体に教職員3人ないし4人グループで分散し、下記1~6の基本動作などを参加者全員で行いました。
1.要救助者発見
2.周囲と頭上の安全確認(二次災害防止)
3.応援要請(119番通報「倒れている人に反応が無い」と「AEDを持ってきて」)
4.呼吸確認(ふだん通りの呼吸無し=胸と腹部が動かない)
5.胸骨圧迫(強く、速く、絶え間なく)
6.AED(心電図測定と電気ショック作動前、要救助者から離れ、感電を防ぐ安全措置の徹底)

教員たちは毎年、胸骨圧迫とAED使用訓練をしているそうです。1分間100~120回テンポの圧迫リズムや「ひじをまっすぐ伸ばし、垂直にして押す」などの基本は体得されていました。圧迫する際、胸を押す手に反対側の手指を添える意味について、「ただ添えるのではなく、心臓を押している手の指先を持ち上げ、力を手の付け根に集中させるためです」という説明に、「そうだったのか」と声が漏れるシーンも。

一般市民が救命救急シーンに出遭うことは、なかなかありません。このため、ほとんどの人が撮影機能のあるスマホを持ち歩いている現代、“ふだん見ない光景”を見ると、スマホを向ける人が少なくありません。最も重要なのは要救助者の命、次に大切なのは要救助者のプライバシー。AEDは胸をはだけて作動させるため、なおさらです。

「もし余裕があれば、居合わせた人に頼んで、外を向いて人垣を作ってもらいます。要救助者に寄り添い、交代しながら胸骨圧迫を続けましょう」というアドバイスが添えられました。

川崎防災士は、職業病ともいえる腰痛をこらえながら、ご高齢の今も救命救助ノウハウの普及活動を続けています。終了後は防災士全員で訓練用人形(1体約5kg)などの回収と川崎防災士のワゴン車への積み込みを行い、全日程を無事完遂しました。